2020年05月31日

一触で

もう20年近く前でしょうか、友人である他派の中国内家拳の師範との会話で、師範がこう言っていたのをたまに思い出します。

「僕は今の自分の戦い方に満足していません。自分の主武術である形意拳の一撃で相手を倒す理想をどこまでも追求していきたいんです」

ちなみに内家拳師範の団体は組み手大会があり、師範はその全日本大会、そして世界大会を何度も制している実力者でした。

師範とは何度も交流組み手をおこないましたが、その鞭と言うか蛇と言うか、しなやかに変幻自在に変化し、しかも当たると重い打撃に何度も苦しめられたものでした。

あれだけ実績があり、そして実力があっても、形意拳の一撃と言う理想をどこまでも追い求める姿勢に頭が下がる思いでした。

そして師範の道場を訪ねるたびに言うのです。

「川村さん、すこし分かってきたことがあります。組み手しましょう」

その師範は今はもう居ません。一撃で相手を倒す境地を追い求めた内家拳師範・・・私より2歳ほど若かったのに、本当に残念です・・・

その後、私は空体道を創始して純粋な中国武術から少し離れることになりました。

もし今、内家拳師範に「川村さんの理想する戦い方は何ですか」と問われたらこう答えると思います。

「一触で相手を制する境地です。相手に触れるだけで全てが終わる境地です。私には一生かかっても到達出来ない境地かもしれませんが、どこまでもその境地を追い求めていきます」

多分、内家拳師範はニヤリと笑ってこう言うと思います。

「一撃と一触、どちらが先に到達するか楽しみですね」と・・・
posted by ロン at 21:51| 日記